挿話・雷狼竜と小さな観察者    ラニャーニャ村のカク  1  ある日、渓流の昼下がり。 「んー…、今日は何がいるかニャ……?」  金色の毛並みに包まれた小さな身体に息を顰めて、近くにモンスターがいないか確認するのは、ハンター見習いのアイルー、いわばニャンターのカクだった。  カクはここ、ユクモ村地帯から遠く離れた、ベルナ村付近の龍歴院に所属するハンターに雇われているオトモアイルーだったが、最近ではニャンターとして旦那さんの元を離れて単独行動することが多く、それなりの実績も打ち立てていたのだった。  そんなカクの最近の趣味は、生態未確認の採取ツアーにて行う、モンスターの観察である。 それも、ただ遠くから観察するのではなく、アイルーらしく地面に潜り、モンスターの懐の地面までこっそり滑りこんで、モンスターの視点を味わいつつ――アイルーは地面に潜っていても、外の様子をある程度察知できるのだ――、モンスターになったつもりでフィールドを練り歩く、いや、潜って進む。なんとも変わった観察のスタイルだった。 カクは、昔からモンスター好きだった。 自分の身体が小さくか弱いからこそ、強大なモンスターに憧れるというのもあるが、モンスターの視点に自分を重ねてみるというのも、なかなかドキドキする体験だ。  そうして今回訪れたのは、渓流のエリア6。  ニャンターは、地図やペイントボールを用いなくても、フィールドの地形や大型モンスターの居場所を察知できる。  遠くの方には、確かに牙竜種の大型モンスター、ジンオウガの姿があった。  「よしっ、今日はジンオウガにするニャ!」  今日の観察対象を見つけたアイルーは、そのままそさくさと地面へ潜っていってしまった。  そのままジンオウガのもとまで、地中を進むカク。  地上の様子を察知する。どうやらこのジンオウガは、この場所からじっと動かず、池を眺めているらしい。  変ニャの、と思いつつ、カクはジンオウガの観察を続けることにした。  2  渓流、エリア6。  澄んだ河原と大瀧をバックに、鮮やかな紅色の紅葉が舞い落ちる、美しい峰。  今日もここに、ジンオウガはいた。  自らの姿を写しだす天然物の鏡がそこかしこにあるこのエリアは、ジンオウガの姿を気に入っている「彼」のお気に入りの場所でもある。  昔からジンオウガにくびったけで、自らもいつかはジンオウガになりたいと願っていたユクモ村在住のハンター、「彼」があるきっかけでその身をジンオウガのものへと変えてから、数カ月は経っただろうか。  朝晩に獲物のガーグァを狩る姿も板につき、四足歩行にも不自然な点は見られなくなった。  さらに、彼の正体を知らないハンターに奇襲を仕掛けられても軽くいなしてしまい、旅の商人の一団が彼の縄張りに侵入しても、追い出そうとするどころか自らが退く、人間に決して危害を加えない「変りもの」のジンオウガの存在は、早くもユクモ村集会浴場に通うハンターたちの間で噂になっていたのだが、それは人間の世界を離れた彼が知るよしも無かった。  しかし、それほどにまでジンオウガでいる時間が長くなった今でも、ジンオウガへの無類の憧れは消えていなかった。  こうして、以前と変わらず自分自身の姿を水面に写し出し、じっくりとその鏡像を眺めているジンオウガの姿が、それを物語っている。  平坦な人間の顔とは違う、青緑の鱗に覆われた、長いマズル。  その下の黄色いあごには、鋭い牙が生え揃っている。  これまた黄色い二対の角は、まるで狼の耳のようなシルエットを形作る。  顔から身体に視線を移すと、真っ先に太く強靱に発達した、青緑の腕が目に入る。  二本の腕の間には、ふかふかとした白い胸毛がひと房生えている。彼自身も、ジンオウガのチャームポイントだと思っている部分だ。  うーん、やっぱりかわいいなぁ……  『オォ……ッウォーーーーーーーーン!!!』  自分の肉体の魅力にすっかりのぼせてしまったジンオウガは、感情の高ぶりを発散させるように咆哮を上げた。…まあ最近ついた、悪いクセだ。  が、それと同時に  「ニャーーーーーーーーッ!!」  ポスッ  ジンオウガの胸毛に、地面から現れた小さな影が飛びこんできたのだ。  地中から観察していたジンオウガが咆哮した途端、カクの視界は真っ白になった。  いや、目の前が真っ白なものに覆われたのである。  カクがその身を埋めているのが、先ほどまで観察していたジンオウガの胸元の帯電毛であること、先ほどジンオウガが放った咆哮に驚いて、地面から飛び出してしまったはずみでここに突っ込んでしまったことを理解するのに、そんなに時間は要さなかった。  「ニャ……、ニャ…………」  なんとか胸毛から抜け出したカクは思わず後退りしはじめ、やがてジンオウガと視線が合った。近い。こんなに近いのに、ジンオウガはこちらに遅いかかる素振りを見せない所か、おっかなびっくり、といった表情を厳つい獣の顔に浮かべているように見えた。  そして、ジンオウガは静かに唸り声を発した。  『…ガウ………』  …お前、見ない顔だな。  「…ニャっ?!」  その獣の唸り声を耳にしたカクは、再度驚いて小さく飛び上がった。  眼の前にいるモンスターが発しているのはただの獣の唸り声だというのに、カクにはまるでジンオウガが自分に向かって語り掛けているように聞こえたのだ。  一部の獣人族は言語学習能力に長けており、自分達の使う言語や人間の言葉のほかに特定のモンスターが発する言語も、学習すれば解すことができるといわれている。  実際、現在調査が進んでいる新大陸に向かったオトモアイルーが、現地の先住民である獣人族からレクチャーを受けて、小型モンスターの言葉を話してそのモンスターを仲間に引き入れるという実証実験をやっているらしいのだが、カクはジンオウガ語なぞ学んだ覚えはなかった。  それでも、ジンオウガは話しかけ続けている。  『グルゥ……?』  …誰のオトモアイルーなんだ?旦那さんとはぐれたのか?  「ニャ……、違うニャ。オレはベルナ村に住んでるニャンターで、単独で行動してるのニャ」  カクは、どういうわけかジンオウガの問い掛けに対して、人間の言葉で応答している自分がいることに気が付いた。  いや、こんなのおかしいニャ、ジンオウガが人語を話すのも、オレがそのおしゃべりジンオウガと人語で会話してるのも、全てがおかしいニャ!  『ガルル……』  …それで、今日はなにをしに来たんだ?まさか、おれを狩りに、か?  「いや、そんなつもりはないニャ!ただ、あなたを地面から観察してただけニャ……、ホラ、あなたはとってもかっこいいから…」  『…フッ……ウォン!』  …ふっ……はは、お前とは趣味が合いそうだな。ジンオウガ、好きなんだろう…?  「……確かに…だいっ………好きだニャ。」  それでもカクは、おしゃべりジンオウガとの会話をやめようとしなかった。  このジンオウガは、オレの密かな、誰にも言えない願いを受け入れてくれるだろう…ニャと。  数十分の間、1頭のジンオウガと1匹のアイルーは、飽きることなく談笑を続けていた。  「それで…一つだけお願いがあるのニャ」  大型モンスターを前にしたときの独特な緊張感も、このジンオウガとたわいのない会話を重ねることでほぐれつつあったカクは、急に改まった口調で目の前のジンオウガに頼みはじめた。  『グルッ…?』  …なんだ…?  「…ニャっ。その、あなたの…身体を触ってみたいのニャ」  それは、モンスター好きのカクにとっては、どんなに長い間ニャンターを続けていても、決して叶うことはないであろう願いだった。  オトモアイルーとして、ニャンターとして。常日頃から村で暮らす一般人よりも、モンスターと対峙し、モンスターが発する熱を肌で感じ取り、お互いに戦いあう機会が多かったが、モンスターたちと肌で触れあうことはできなかった。  理由は単純、ハンターたちは手に武器を持っているからである。  だからこそカクは、モンスターたちと触れあうことに強いあこがれを抱いていたのだ。それが、弱くて脆いアイルーにとっては、モンスターと近付くことでさえ危険なものだったとしても。  もっとも、先ほどジンオウガの胸毛に頭をつっこんでしまったせいで、思いもよらずにそれは叶ってしまったのだったが、やはり改めて、生きたモンスターである彼の鱗や獣毛に触れて見たかったのだ。  『…ウォン……ォアンッ!』  …ああ、いいぜ。…ただし痺れたりするなよ…?  ジンオウガはそれほど間を置かずに、そう答えた。  その顔に、どこか懐かしい物を見るような、微笑みを浮かべながら。  3  「じゃあ……」  神妙な面持ちでそうつぶやくと、カクは目の前のジンオウガの右腕へと小さな手を伸ばした。  日の光を受けてほのかに輝く、青緑の鱗。  その雷狼竜の鱗に、そっと小さなアイルーの肉球が重なる。  「……ニャ…………」  ジンオウガの腕を愛おしそうに撫でるカクは、恍惚とした鳴き声を口から漏らした。  その姿を、どこかやさしげな表情で見守るジンオウガ。  『グルル……?』  …それで、どうなんだ?触った感じは…  「ニャ。うまく言えないんだけど……」  ジンオウガに彼自身の鱗の評を請われたカクは、やや顔をしかめながらこう言った。  「その、……少し汚れてるニャ。」  『アォオォンッ?!』  思いも寄らない返答に、ジンオウガは思わず素頓狂な声を上げてしまった。  確かに、ジンオウS装備を作ってから今に至るまで、身体を洗うことはしていなかった。自然に暮らしていれば、身体は汚れて当然だろう。  「せっかくのカッコいい鱗なのに、くすんじゃってもったいないのニャ。」  『オォン……』  そうだな。おれも綺麗な鱗のほうがいい。けどジンオウガの身体じゃ自分の体を洗うこともできねえしな…。  二人の意見は一致したようだった。  「そうだったら……」  そう言うとカクはジンオウガの鱗から手を外し、自分のポーチをおもむろに探り始めた。  「…あった! ニャーン!てぬぐいニャ!!」  ポーチから取り出した、質素なつくりのてぬぐいを、ジンオウガに向かって大げさに掲げるカク。  『グルゥ…?…フンッ』  そいつを使って拭けというのか?…フンッ、そんなのジンオウガの爪でやぶけちまうだろうが。  「ち、違うニャ!オレがあなたの鱗を……磨いてあげるのニャ。」  カクが手にした小さなてぬぐいに向かって不満毛に鼻を鳴らしたジンオウガだったが、そのあとに続く思い掛けない申し出に、  『ガルル………オッァン!』  はぁ………まあいいや。奇麗に磨いてくれよ。  少し呆れ、しかし笑いながら了承した。  「それじゃあちょっと待つニャ…」  カクは手にしたてぬぐいを、すぐ傍らにある澄んだ池の水で濡らし、固く絞った。  そしてそのてぬぐいを、先ほど見つけたジンオウガの右腕の汚れに当ててこすり始めた。  ていねいに、ぴかぴかに。ジンオウガの鱗をひとつずつ磨きあげるカクは、なんだか楽しくなってきて思わずほおを緩ませた。  そんな様子を横目で見ているジンオウガも、くすぐったさとほほえましさが混ざりあった笑みをその獣の顔に浮かべている。  青い鱗の次は黄色い鱗、腕の次は脇腹の鱗、その次は脚、さらにその次は黄色いしっぽ……  ときどき、彼の身体から生えている帯電毛のそばを飛んでいる雷光虫にしびれないように気をつけながら、カクはどんどんとジンオウガの身体を磨き進めていった。  「ちょっと失礼するニャ」  そう言うとカクはジンオウガの後頭部へとよじのぼり、今度は彼の頭から生えている二対の角を磨き始めた。  やがて両方の角がぴかぴかになると、カクはこう尋ねた。  「…顔も磨くニャ?…痛くないようにはするニャ」  『ウォン…!』  ははっ、ここまで来たんだからやっておくれよ……。  相手の了承を得たカクは、少し身を乗り出してジンオウガの顔の汚れも落とすことにした。  そうしてジンオウガの顔を目の前にしたカクは、その美しさにはっとした。  流れるように長いマズルに鋭い眼光を宿す蒼い眼、そこから伸びるイナズマを思い起こさせる模様……  大きな口から漏れる、肉食モンスター故の口臭すらも、カクには愛おしいものに思えた。  間近で見るジンオウガは、こんなにも美しく、こんなにも勇ましいなんて……  『グルル…』  やるなら早くやってくれ。待ってるんだぞ。  静かに目を閉じたジンオウガにそう「言われ」て、カクは我に帰った。  「ごっ、ごめんニャ。つい見とれちゃったのニャ」  『グル…ウォン!』  まあ、その気持ちもわからないわけでもないな。はは……  「そうだニャ。あなたは、ジンオウガはカッコいいのニャ!!」  そう言うとカクは止めていた手を再び動かしはじめ、ジンオウガの顔を覆う鱗をそっと磨き始めたのだった。  「…ふぅっ!できたニャ!」  カクはジンオウガの頭から降り、ジンオウガの鱗を磨き続けたせいでかなり擦り切れてしまったてぬぐいで汗を拭いながらこう言った。 『オォン…!』  ああ、おかげさまでピカピカだ。  そう言うジンオウガの言葉通り、彼の身体は変身したての頃と変わらない、鮮やかな輝きを取り戻していた。  「えへへ……まさかジンオウガに触るだけじゃなくて、体まで磨けちゃうなんて、オレとしても夢みたいで嬉しかったのニャ!……ニャ?」  ジンオウガに向かって無垢な照れ笑いを浮かべるカクの顔が、突然強張った。  『アォン…?』  どうかしたか…?  「いや、もうすぐ採取ツアーがタイムアップしちゃうのニャ!ヤバいニャ!!」  カクが受注していた採取ツアーのクエストは、タイムアップでもクエスト達成となり拠点に送還される。  慌て始めるカクに、ジンオウガは優しくこう言った。  『…オッァン!』  残念だな。おれはギルドの迎えに見つかりたくないから、この辺でお別れだ。気を付けて帰れよ。  「…分かったニャ!オレ、今日のこと絶対に忘れないニャ!」  ジンオウガに別れを次げたカクは、その場を走り去った。名残惜しそうな表情を、ジンオウガに向かって浮かべながら。  ジンオウガはそのアイルーの姿が消えるまで、小さくなる背中を静かに見つめていた。  4  夕刻、ユクモ村集会浴場。  「ニャふっ、ニャむニャむ……ウマいニャ!!」  採取ツアーから無事帰還したカクは、日中のジンオウガを全身磨き上げるという重労働、もとい採取ツアークエストの疲れを癒すべく、脂の乗ったサシミウオの塩焼きを頬張っていた。  「おっ、カクじゃん。今日はどんなヤツを地面から追っかけ回してたんだ?」  その隣に、ルドロス装備を着た若い人間の男性ハンターがやってきて、カクに声を掛けながら腰掛ける。  「ニャっ…なんだ、ツキマサかニャ」  「なんだはないだろー?せっかくお前の変わった趣味につきあってやろうとしてるのにさ」  ユクモ村専属ハンターの中でも、このツキマサという少年はカクと精神年齢が近いこともあって、気を置かずに話あえる仲だった。  ちなみに着用しているルドロス装備一式は、最近になって生産できたので以前着ていたアシラ装備から乗り換えたものらしい。  「そんで、今日は何を見てきたの」  「ニャ、………ジンオウガ…ニャ……」  そのジンオウガとおしゃべりした、というところまでは言いたくなかった。  「おぉー!ジンオウガかー!珍しいのも居るんだなー!」  ツキマサはカクの小声の報告に、大げさに相槌を打った。  「声が大きくて恥ずかしいのニャ!」  「あ、わりぃわりぃ。しかしジンオウガと言えば思い出すやつがいるんだよなー。そいつはジンオウガのことが呆れるほど大好きでさー、あ、そういえばこんな噂知ってる?」  「出たニャ。ツキマサのおしゃべりモード。うるさいのニャ」  カクはツキマサのおしゃべり好きに呆れた表情を浮かべていた。良くも悪くも口が軽いのは、ツキマサの特徴のひとつだ。  「ったく、面白い話だからちゃんと聞けよなー。それで、『モンスターの装備を長い間着続けると、そのモンスターに変身しちゃう』っていうまあアホみたいな噂なんだけど……」  ツキマサの話はこうだった。  ジンオウガのことが大好きなそのハンターは、ジンオウガになりたくて、ジンオウガの装備を着続けたのだ。そのしばらくあと、彼は行方不明になったが、それと同時期に、人間を襲う素振りをまるで見せない風変わりなジンオウガが姿を見せるようになった、という。  「だからさ、俺はそのジンオウガは、じつはあいつが変身した姿なんじゃないかって、勝手に思っててさ、……カク?」  話半分にツキマサの語りを聞いていたカクは、次第にその内容に驚きを隠せないようになった。  人間を(アイルーも)襲わないジンオウガ。ジンオウガが好きだと言ったオレに、「趣味が合う」と返したジンオウガ。  心当たりがありすぎる。  まさか、昼間のジンオウガって、そのハンターが………  「………いやいや!そんなの絶対ありえないニャ!!!」  ツキマサの話を聞きながら、途中から固まっていたカクは、その脳裏に浮かんだありえない仮説に素頓狂な叫び声を上げた。  「…ま、噂は噂だからな。信じるかどうかはあなた次第、なんてね」  「…わかったニャ。大声だしてゴメンニャ。」  冗談っぽく茶化すツキマサに、カクは申し訳無さそうにアイルーの尖った両耳を垂らした。  ツキマサが座る前にはあつあつほかほかだったサシミウオは、すっかり冷めてしまっていた。  星空輝く夜の渓流、エリア9。  夕食も終え、そろそろジンオウガも眠る時間である。  いつもの寝床に横たわったジンオウガは、彼の黄色い前足を眺めていた。  昼間のアイルーは、本当にピカピカに磨いてくれたらしい。その証拠に、前足を被う鱗、その先に生える黒光りする爪も1点のくもりもなかった。  ジンオウガは件のアイルーの仕事っぷりに、満足そうにグルグルと喉を鳴らしたが、同時に気になることもあった。  アイルーのあいつが、元人間のジンオウガであるおれの言葉を理解し、会話まで交わしていたという点である。  久々に双方向でコミュニケーションができる喜びに、思わずあいつには話し過ぎてしまったが、本来はありえないことだ。  まさかあいつ、ジンオウガ語を勉強してたのかな。いや、それはない。ジンオウガ語なんて知ってたらおれに話しかけるときも人間語じゃなくてジンオウガ語で話かけているはずだ。  とすると、おれが発する言葉が特殊なのだろうか。確かにおれは人間の言葉を理解することができる。でも、人間には話しかけてもあまり理解してもらえなかったみたいだし……  ……人間いえば、あいつらは元気にしてるかな。  しばらく前に別れを告げた、懐かしい2つの顔を思い出しつつ、やがてジンオウガは眠りにつくのだった。  次に、「彼ら」が再開できるのは、いつになるだろうか。 雷狼竜と小さな観察者  完 -------------------- 補足。 一連の「雷狼竜から「戻れない」」シリーズの小説の第一作の最後に、ジンオウガとなった「彼」を目撃したハンター見習いのアイルー(=オトモアイルー=ニャンター)が登場しましたが、そのニャンターは作者が第一作を執筆する際にMHXXのニャンターモードでジンオウガの仕草を観察するために使っていたニャンターのことだと思って書いていて、そのニャンターは名前をカクといいます。Twitterで話した裏設定です。 今回の挿話は、そのニャンターの話を掘り下げて書いたものです(決してメアリー・スー的なアレではないという弁解)。 今回は疑問が残るオチで終わってしまいましたが、とりあえず「アイルーは人間の言葉を理解して話すことができるし、本文中でも触れられている通りモンスターの言葉も習得することができる」という点と、「「彼」はジンオウガでありながら元人間なので、人間の言葉を理解できる」という点は覚えておいてください。